PSI Vol.1, No1 May 1976 Overseas literature abridged translation pp.35-40.
 海外文献抄訳
この欄は、電気学会誌の「学界時報」や電子通信学会誌の「海外論文紹介」に相当するもので、次号以降各編集幹事が分担して 執筆されることと期待されるが、何分にも創刊号には間にあわなかったので、とりあえず、筆者がIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, lnc.)の関係で気づいた文献の中から拾ってみることにした。IEEEは世界最大の学会で、米国内だけでも会員数16万、外国を入れると18万人に達するといわれている。1975年12月現在の日本人会員数だけでも1915名に達した。筆者が気づいたサイ関係文献はつぎの6件である。

(1) 1965年4月スペクトラム誌スタインメッツ記事
(2) 1972年1月情報理論国際会議でのTarg講演
(3) 1974年3月年次大会における超心理特別講演 3論文
(4) 1975年1月通信部会誌にNature論文転載
(5) 1975年7月通信部会誌にユリ・ゲラー論争
(6) 1975年9月Wesconでサイコトロニクス特別講演 5論文
以下、上記の内容について、順次簡単に御紹介しておこう。

 まず(1)はCharles Proteus Steinmetz (1865-1923)の生誕100年を記念して、特集した記事の中に、つぎの文献を筆者が目にとめたのである。
(1) C.D.Wagoner : Steinmetz revisited : Thenlanand the myth,IEEE Spectrum Apri1 1965, pp.83-87.
 脚注によると、Wagonerは1954年にG.E.を退職し、1965年にはすでに死亡した後であるが、上記記事は1957年7月号General Electric Review誌に掲載された記事から抜粋したものである。この記事の86ページにPersonal philosophyという見出しがあって、つぎのようなことがのべてある。
 Wagonerが何か若い人々に役だつようなSteinmetzの忠告を探しているうちに、30年後の今日でも役だつようなつぎの名言があった。“もし若い人が金を得るだけの目的で仕事をしようというのであれば、かれに何の関心ももたない。しかし、“もし若い人がかれの仕事のために仕事をし、それを完遂することに満足を感ずるためにするのであれば、大いに関心をもつ。”
 この思想は実験倫理の創始者丸山敏雄氏のいう「慟きは最上の喜び」という思想とよく一致する:またSteinmetzはいう。“もし、若人のために一つの美徳を伝え得るとすれば、それは神聖な不平の精神である。なぜなら、それがなければ世界は停滞するだろう。満足しない人間は前に進み、自分の行為に満足した人は後退する。”そして、つぎの質問に対する答えが大切な点であるから、原文のままのせておく。
Roger Babson, well-known economist, asked him : "What line of research will see the greatest development during the next 50 years ? " With a moment's careful thought he replied : " I think the greatest discovery will be made along spiritual lines. Here is a force which history clearly teachs has been the greatest power in the development of man and history. Yet we have been merely playing with it and never seriously studying it as we have physical forces.
"Someday, people wiII learn that material things do not bring happiness and are of little use in making men and woman creative and powerful. Then the scientists will turn their laboratories over - to the study of God and prayer and the spiritual forces which, as yet, have hardly been scratched. When this day comes, the world will see more advancement in one generation than it has in the last four."
 つまり、将来の科学者は研究室をあげてサイ現象の研究に全力を注ぐようになるだろうし、そうすれば、つぎの一世紀の進歩は過去4世紀分の進歩以上のものになるだろう、というわけである。確かにSteinmetzには超常的な所がある。これはかれのそばに相当期間滞在したことのある日本人から筆者が直接きいた話だが、かれはかれとかれの秘書しか読めない速記文字で尨大なメモを書いていた。かれの卓抜な著書はその一部にすぎない。筆者は直接その速記文字をみたわけではないが,それが宇宙文字のようなものかも知れないと想像している。
 筆者がハワイに滞在中、サンフランシスコ近郊のAsilomarという場所でIEEE情報理論部問のlnternational Symposiumが開催され、そこでの招待講演につぎのテーマがあることを知った。

(2) Russel Targ: Some Recent Results in ESP Research, from 5:15 p.m.,Monday January 31, 1972.
 しかし、このニュースを知る前に,ハワイ大学内の特別講演が予定されており,小生が講演の当番になっていたので、たまだま電通大から御留掌中の原健一先生(現在富山大学電子工学科教授)に依頼してきいてもらった。それによると、Duke大学で従来行われたESPの統計的測定法を説明し、自分の考案したエレクトロニクス応用ESP訓練測定器の使用成績等をのべたようであった。Targの装置は完全に電子的なもので、現在Aquarius Electronics社から100A ESP Machineとして製造販売されている。筆者は昨年4月1日アルビオンの同社と、4月2日スタンフォード研究所とで同装置を見学し、動作してみた。それについてはすでに報告したことがあるので**、ここでは省略する。

 IEEEが超心理学の問題を最も大きく取扱ったのは1974 1nterconのFeature Session(1974年3月26日夜7〜10p.m.)において、New Advances in Parapsychologyの名の下にとりあげたつぎの3論文である。
(31)E. Douglas Dean: Channel Capacity of Telepathy Channels.
(32)James D.Beal : Field Effects, Known and unknown, Associated with Living Systems.
(33)John Mihalasky : The Role of the unconscious in Problem Solving and ldea Generation.
 DeanとMihalaskyの両氏はともにNewark工業大学の教授であり、BealはWorld lnstitute Council, New York に所属している。昨年筆者がNewark工業大学を訪問してMihalasky教授にきいた所によると、同夜はStatler Hilton HotelのGrand Banroomに約500名の聴衆が一杯つめかけ、質問も活溌で10時たっぷりまで熱心に討論したということであった。3論文のうち、(32)の内容は大部分邦訳されている*。また、(31)と(33)は解説の形でExecutive ESPという単行本の中に記述されている**。これも近く邦訳出版の予定ときいている。(31)の論文は“テレパシー回線の通信容量”という題であるが,ここでは,通信を受信する被験者が指にPlethysmographをはめていると、本人が気づかない場合でも、送信者が受信者に関心の深い人の名をみつめたとき、血管の収縮を記録し、数kmから数1000 km の距離で0.001〜0.22bit/sec.の割合の通信が可能であることをのべている。
 (32)のBealの論文は“生体系における既知・未知の場の影響”という題で、原文15ページで、67篇の参考文献をつけた長いものであるが、要するに人間は静電界、静磁界、電磁界、宇宙線その他いろいろの場の影響をうけるとともに、人間自身も意識の影響で体温、皮膚抵抗あるいはオーラが変化する。だから最近めざましい進歩をとげたエレクトロニクスその他の科学測定器を応用して、できるだけ多くのパラメーターを観測して総合的に人間全体を捉えなければならない、と強調しているわけである。
 (33)のMihalaskyの論文は“問題解決とアイデア発想における潜在意識の役割”という題である。論文は短かいが、非常に示唆に富んだ内容をふくんでいる。われわれはだれでも、夢、幻、ひらめき、予感あるいは腹の感じといった感じで予知情報をうけるものである。例えば、会社の経営において多数の市場調査等の情報をもとにしてコンピューター分析にかけるが、最後にどうしても社長あるいは経営者の判断が残る。それゆえ、事業に成功しようとするならば、予知情報の形を認識する学習をし、それを活用する勇気をもたねばならぬ。単行本Executive ESPには多数の実例があってわかり易くしてある。

 (4)は世界で最も歴史の古い権威のあるイギリスの雑誌ネーチュアが超心理学関係の論文としてはじめて取上げたとして、マスコミが大きく報道した論文である。 IEEEの文献としてはつぎのものである。
(41)RusselI Targ and Harold E.Puthoff : lnformation Transmission under Conditions of Sensory Shielding IEEE Communication Society, January 1975, vol.13, N0.1, pp.12-19.
 この論文の内容はつぎのNature論文をそっくり転載したものであるが、文章の中に登場してくる元Burbank 警察 署長で現ウェスト・バージニヤ鉱山会社社長のPat Priceの顔写真と、Stanford研究所(SRI)をバックに撮影した 両著者の近影がある。
URI GELLERの成績表
もとの絵 形  式 成  績
爆   竹(外)
葡萄の房(外)
魔   玉(外)
太 陽 系(中)
ウ サ ギ(中)
樹   木(外)
封   筒(外)
ラ ク ダ(外)
吊   橋(外)
か も め(外)
凧   (外)
教   会(外)
ハートに矢(外)
線   画









電算機CRT
電算機メモリ
CRT消光
近似している
全く一致
完全に相異(一部類似)
いくらか類似
不描
不描
不描
馬の絵になっている
川に虹のような絵
類似した絵
類似した絵
完全に相異
矢だけ一致、他は異
註:(外)は絵が遮蔽室の外、(中)は中にあることを示す。
(42)R.Targ& H. E. Puthoff: 同上題名、Nature, vol.251, 0ctober 18, 1974, pp.602‐607.
 題名を直訳すると“感覚遮断の条件下での情報伝達”となるように、透視(clairvoyance)の問題だけを扱った である。全体は3部よりなり、第1部はUri Gellerによるグラフ資料の遠隔観察、第2部はPat Priceによるの景色目標の遠方観察、第3部は数名の一般被験者について施行した遠方からの刺戟による脳波活動の記録である。
 まず、Uri Gellerは遮蔽室の中に入り、絵を遮蔽室の外においたり、絵を中に入れて、Uri Gellerが外にあって それぞれつぎのような絵をかいており、つぎのような成績を得ている。

本原稿を印刷に回した後つぎの論文が到着したが時間の都合で掲載できなかった。
 H.E.Puthoff and R. Targ : A PerceptuaI Channel for lnformation Transfer over Kilometer Distances:
HistoricaI Perspective and Recent Research, IEEE vol.64, N0.3, March 1976, pp.329-354
詳細は月報4号参照

 第2部は二重盲検法でPat Priceの透視能力をテストした。まず、SRIから車で30分程度でゆけるようなフーバー塔、Baylands自然保護区、電波望遠鏡、Redwood市小港、有料橋入口、ドライブイン劇場、美術工芸庭園、教会およびRinconada公園の9個所を選定し、無作為の順序で行先を知らされぬまま被験者は車でつれてゆかれる。被験者は現地に30分間滞留し、建物などの構造材料や色や周囲環境をテープに吹込み、後でタイプする。 Pat Priceの方はSRIの一室に残ったまま遠方の様子を記述する。後で、5名の審判者が両方の記述をくらべて合否を判定する。その結果、9ヶ所のうち、6ケ所までは適合していると判定された。
 第三部は隔離された被験者と遠方の刺戟との間で情報伝送が行われたことを示す目安として、被験者の脳波が役立つどうかをチェックしたものであるが、結論は予想通り、脳波に変化が現われることがわかった。実験は送信者の目の前方1mの位置から毎秒6回または16回の閃光列をGrassPS・2という装置で10秒間ずつ発生した。受信者は送信者から7m離れた場所にある二重シールド室の中で脳波を記録された。受信者は男性2名、女性4名であったが、中でもH.H.という被験者が明瞭な反応を示した。つまり、脳波記録をコンピューターで分析し、スペクトル曲線を描くとH.H.のαリズム相当部分が最も尖鋭で、フラッシュ周波数を高めると、α成分が次第に抑制される状況をよく示している。

 (5)V. I. JohannesおよびTarg&Puthoffによる回答 :Letters on Research in Extrasensory Perception, IEEE Communications Society, July 1975, vol.13, N0.4, pp.9-10.
 討論者JohannesはBeII Telephone Laboratories, Holmdel, N.J. 07733に所属している研究者であり、自称アマチュア手品師である。かれによると、科学者というものは、微分方程式を解くほどには手品を見破れないものだという。その実例を二三あげている。だから、手品師に欺かれないためには、研究チームの中に手品師を参加させることである。SRIのUri Gellerの調査ではその点に手ぬかりがあったのではないかという編集者宛の手紙である。
 これに対し、SRIのTarg&Puthoffの解答がつぎの10ページにのっている。実はTarg自身もアマチュア手品師であり、複数の職業手品師も実験監視に参加し、厳重な条件をつけてUri Generにやらせている。実験中、ビデオテープや映画フィルムに撮影し、職業手品師が一駒―駒検査した結果、かれらの仕様の条件で同様の演技をすることはできない、という結論に到達した。
脚註
*丸山敏雄:万人幸福の栞(新世書房)p.68。
**テレパシー46号と超科学5号
*〈人間の超能力に関する海外文献〉一資-5,1974年11月1日,日本心霊科学協会関西支部発行。
* Dean, Mihalasky, 0strander and Schroeder : Executive ESP, 1974, Prentice Hall.

 (6)はWesconにおける特別研究発表である。Wesconは西部エレクトロニクス会議の略で、毎年秋開催され、東部で毎年春開催されるIEEE lnterconに対抗する大きな催しである。Wesconはつぎの3団体の共同で非営利的な活動である。
L parenthesisサンフランシスコ湾地域会議
ロスアンゼルスIEEE会議
エレクトロニクス代表者協会の南北カリフォルニヤ支部
 1975年秋は9月16日から19日までサンフランシスコで開催され、展示会はBrooks Hallで、講演会はサンフランシスコ市公会堂で行われた。9月17日(水)は午後7時からサイコトロニクス特別研究会がDr.Thelma Moss 計画ならびに司会して実行された。 Wesconには全国から25,000人の参加者が期待されるということであったから、この興味ある話題には相当数の聴衆が集まったことだろう。提出された論文はつぎの通りである。各著者ともUCLA Center for Health Sciences所属
(61)William Embodem Thelma Moss and John Hubacher: The Energy in Plants (as seen through Kirhan Photography),WesconSpecial Session, "Psychotronics,1975"(以下の論文に最後の部分省略する)
(62)John Hubacher, Jack Gray ,Thelma Moss and FrancesSaba: A Laboratory Study of unorthodox Heahling.
(63)Clark Dugger : Kirlian Cinematography at UCLA
(64)Barry E.Taff and Kerry Gaynor : Another Wild Ghost Chase? N0,0ne Hell of a Haunt.
(65)Barry E.Taff: Learned Psi: An Exploration of Parameters in a Controlled Study.
 筆者は昨年4月14日午後U C L A Medical Center ビル2階28181号室にDr.Thelma Mossを訪問し、長時間瞑想したが、その模様は別の機会に報告する。さて、論文(61)ぱ植物のエネルギー(キルリアン写真からみた場合)*となっている。普通のキルリアン写真であれば、高圧高周波電圧を約1秒間位かけて写真をとるわけであるが、ここでは電圧も何もかけないでも数時間フィルム上数センチの位置におくと、低級動物や植物の写真がとれるということである。これは前記(32)の論文からも当然予想されることである。この論文の著者らはその原因として、複雑な有機 分子である所の数種のルシフェリン(luciferins)の酸化の際に発生するものである。実験室ではいろいろな虫のオーラ写真を撮影して示した模様である。
 (62)は“正常でない治療法の実験室研究”で、magnetic passes という方法で劇的に治癒した三つの症例をのべている。第1例は自動車事故で悪質骨折して切断しなければならないと宣言されたが、8ケ月位の処置で治ったづ第2例は類に弾丸をうけ、右腕が完全に麻蝉していて、神経科の診断では二度と腕が動かないだろうと宣告された42才の男子が研究室にきた。処置すると3ケ月で腕が動き、6ケ月で発熱を感じ、8ケ月後に治った。第3例は21才の少女で硬皮症が相当進行していて、主治医は最終症状と宣告した。これは10ケ月で快方に向ったが完全でなかった。いずれの場合もキルリアン写真で診察しながらmagnetic passes という療法を施したが、治療は神秘的で理窟がわかっていない。多分、生体エネルギーが治療者から被治療者の方に移動するのではないかといっている。磁界の影響はMesmerの時代から知られており、ASC(altered state of consciousness)に到達し、暗示や鎮静の効果があるとも想像されている。
 (63)は“キルリアン映画撮影技術”であって、これについてはテレパシー誌46号4ページに報告した記事と図面で理解できると思うので省略する。
  (64)の題を意訳すると、“また狂気じみたゴースト追跡か?否、一つの幽霊屋敷の徹底的探訪だ”ということになる。著者らおよび協力者たちはカメラ、16mmシネあるいは録音器等を担いで、カリフォルニヤのCulver市にあるB夫人の家を2ケ月半にわたり前後8回調査した結果である。いわゆる騒ぐ幽霊(poltergeist)が現われることで噂に上った家である。この種の報告はむしろ従来、心霊科学の領域に提出されたものものであるが、昨年のモナコでも、wesconでも、サイコトロニクスと前ぶれして提出される所をみると、明瞭な境界を設定し難い証拠である。さて、Taffが幽霊屋敷の調査をはじめて以来5年になり、Gaynorがそれに協力しはじめてから約1年半になる。この5年間にまぼろし(apparitions)や、騒ぐ幽霊(poltergeist)や、住みつき霊(hauntings)や亡霊(ghost)に関する報告が100件以上あったが、実際に自分でみたのは約7%であった。狂気じみたゴースト追跡を11軒について徒労に終った後、12軒目がB夫人の家だったわけで、この家を何回にもわたって調査した。B夫人によると、この家には6フィート位の背丈の幽霊が現われ、顔は東洋人のようであった。それが複数でかの女に乱暴し、腕や足首や胸に青黒い傷跡をのこした。1〜2回訪問して気づいたことは、B夫人の寝室が異常に冷たく、異様な臭気が漲っていることだった。2度目の訪問のとき、台所の食器箱のドアが自然に開いて、フライパンが飛出し、数10センチ先の床の上に落ちた。すぐ寝室のもどってポラロイドカメラのシャッターを切って現像してみたら、強い放電のような光がうつっていた。15分後大きい方の息子が何かに感ずいたらしいので、部屋の隅をむけてシャッターを切ったら、前程強くない光がうつった。その後、2〜3回シャッターを切った後、人口の閉め切ったドアの方から、急に冷たい風と悪臭が漂ってきたので、シャッターを切ったら床上30cm位から上に直径30cm位の真丸の光るボールが写っていた。数分間議論した後、Taffが東側の窓側をみたら、数個の青い光のボールが敏速に動いていた。シャッターを切ってみたら、露出オーバーの像が現われ失敗した。しばらくしてCandyという娘がかの女の前に何かが立っているといったので撮影したら、かの女の顔が完全に白く露出オーバーになったのに、バックのカーテンその他は明瞭に写った。また、まもなく、Candyが自分の右の方に何かがあるといったので、撮ったら、前と同様、かの女の顔以外クッキリと写った。2分後、Candyが何もいないといったときの写真は普通と変らぬ像になった。
 第3回目のとき、女性カメラマンと3人で訪問した。この日はじめて、小さな光がパッパッとひらめいているのを3人ともみた。この日は写真の収穫がなくて、同一場所から円または三角形の光が10回光った。
 また、1週間後の夜第4回の訪問をしたときは、家族5人とわれわれ3人、それに10名以上の参観者で降霊会のような形式になった。この夜,特別に強い光が形や大きさや光輝を敏捷に変化した。それはだれの目にも詐術的にはみえなかった。そんなものを人工的につくるとすれば、大規模なレーザー光源を高級な制御回路で変調しなければならないだろう。また、16才の息子の話に従い、ある曲のレコードを演奏すると、光球は怒りだすようにみえた。ある瞬間のボール形の光の写真を何枚か撮った。しかし、意味のある絵は1枚だけしか撮れなかった。
 第5回目の訪問では、UCLAの希望者をふくめて20名以上にふくれ上った。前回よりも強い光の乱舞がみられた。とくに、外部からの光が全く入らぬよう目張りした。この夜は番号のついた黒い板を何枚か壁にとりつけ、その前に光が現れるよう期待した。何か質問して、“yes”であれば、3番目の板の前で2回明滅するようにし、“no”であれば、6番目の板の前で4回明滅するようにきめた。驚いたことに、質問にはすぐ回答があった。かくて、われわれは非物理的存在と通信することができた。また,われわれの用意したガイガー・カウンター(ミリレントゲン用)は光球がでているとき、ゼロになり、光球がなくなると、地雑音で動作した。多分、光球のでてる間、放射線を遮蔽するようにみえる。
 夫人からの電話によると、われわれが壁にはりつけた黒い板はみな破りすてられ床上に落ちたということであった。
 第6回目の探訪は前回から6日後でありこの場合は20名以上の人々が立合い、7台の種々のカメラを持込んだ。この夜は光も強く、ときどき、だれの目にもそれとわかる立体的な人の顔、腕および肩などの形をとった。光の色はキセノンかネオンランプのようであった。
 第7回目に訪問したとき、B夫人とかの女の息子は前夜の出来事を報告した。それは、台所の流しの上にある二つのシャンデリヤが3〜4m飛んできて、かの女の腕を打ったというのである。また、同日壁に釘で打付けておいた板が打破られ m も先の方の床におちた。この晩は研究室長のDr.Thelma Moss も参加し、有名なプロヂューサー Frank de Felittaは16mm映画撮影機を携えたカメラマンも同行させたが、残念ながら、光の演出はさっぱりだった。しかし、その代り、多勢の目の前で見えない手が黒い板を壁からバリバリ外し、B夫人の顔に叩きつけるというハプニングがあった。
 第8回目の訪問は1974年10月31日に行われた。この日は万聖節の前夜に当り、しかも満月であった。この夜は星明りでも撮影できるビデオテープカメラを携行した。しかし、この日は前回より一そう悪く、冷却と悪臭以外何事も起らなかった。
 その後B夫人は転居し、しばらく連絡が切れたが、約3ケ月後の1975年2月に連絡があって、かの女の新宅の周囲で前と同様の現象がつづいているとのことであった。
 以上、原文の10分の1位しか紹介してないが、この後に考えられる理論がついている。それは、この現象はB夫人とかの女の子供達の情動と関係があるのではないかということである。会場では珍らしいスライドや映画が多数示されたと想像する。
 最後に(65)は“学習されたPsi:管理された研究におけるパラメーターの探究”である。この研究は文献に現われたように、ESPの統計的性質に追加しようとするものではなくて、普通の人でも、学習によってESP能力を強化できるか、ということを確かめようとしているのである。ESPを学習するといっても、従来のように当てっこ(guessing technique)によるのでなく、受け身法(waiting technique)によろうとした。これは、ESP現象は気持を緊張させたときよりも、むしろ弛緩させたときにおこることを考慮したものである。学習が向上したことを客観的に示す生理的パラメーターとしては,EAP(electro acupuncture potentials)および手と頭の生体温度差を用いた。つまり、これらのパラメーターが被験者のESP演出と高い相関関係をもっていると仮定したわけである。 EAPの測定器は著者の考案したもので、つぽに相当する皮膚上の電位差、抵抗、電流および極性をデジタルに表示する。また、生体温度の測定は2本のアルコール寒暖計で右手第2指と額に貼付けて行った。被験者は“訓練をうけた者”10名と“未経験者”10名とよりなり、UCLAの中の絨壇を敷いた特別室に円形に坐って行った。また、前記被験者の他に20名のtarget persons (TP)も必要であった。TPに対しては、どの被験者が“訓練をうけた”か、“未経験”かについて知らされていない。まず、予備測定のデータをとった後で、TPに対して、被験者についての友人関係等に精神を集中するように要求され、その後で、被験者がマイクからテープレコーダーにTPの姓名についての感想を吹込むのである。これをFVR(free verbal response)という。われわれはこのFVRを後でいろいろな目安で評価して点数をつけ、さきのパラメーターとくらべてみたのである。途中の詳細は省略するが、4年間の研究から著者はESP能力は人によっては強化し、学習できると断言してもよいと思っている。ただし、EAPや温度とESPの相関はあまり明瞭にでなかった。

The museum of kokoro science
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