PSI Vol.1, No1 May 1976 Thesis 1. pp.20-24.
 論文
サイ情報系仮説の部分的修正
関英男(重力波研究会)
Partial Modification of the Hypothesis on Psi lnformation System
Hideo SEKI (GravitationaI Wave Research Committee)

Abstract
Several years ago, the same author proposed an hypothesis on "psi information system" (PIS) so as to explain all psi phenomena. So far, he has assurned univarinos as the ultimate particles those which are the constituent of all possible particles. And the diameter of a univarino was estimated as 10-70‐10-50 cm. Then he assumed ψ1-particles(hikochi)or a particle group of comparatively larger size and ψ;2-particles (ashikahi)or a particle group of eomparatively smaller size, both being still smaller than conventional elementary particles and formed as a result of proper conglomerations of the univarinos. The so-called PIS is presumably composed of ψ1 or ψ2 particles. This concept was pubhshed at page 34 of the book "Five Dimeas World" (U.S.L.197).
However, the author would like to abandon here the idea of univarinos, while conserving the remaining part of PIS hypothesis. The point of logical difficulty about the idea of univarinos stems actually from the infinite requirement to seek always the fundamental nature of the interspace between the ultimate particles. So the author has become gradually inclined to admit that the interspace will not be made clear even hereafter and should not be asked further. lnstead, we should assume that the space is filled by some unknown substance as "nutrino sea" or the revival of the "ether".
1. まえがき
 著者が幽子情報系という語を初めて使ったのは1971年であった(1)。この種の研究を発表する場をもたなかった著者は、その後の思考結果を英文単行本の中で紹介した(2)。その際、海外の人々にも容易に理解してもらうことと、今後の思考を展開し易くするため、幽子情報系の代わりにサイ情報系(Psi Information System)なる語を用い、P. I. S. あるいはP I Sと略して表現することにした。これによって内外の有識者から貴重な御批判を頂戴することができ、初期の考え方の一部に修正を加える必要を痛感するにいたった。その点を一口にいうならば、究極の粒子として宇宙微子を放棄することである。サイ情報系仮説に関するその他の点については、現在でも大局的には誤っていないと考えている。今回幸いにして適当な発表の場が与えられたので、修正の理由を説明するとともに、サイ情報系仮説そのものの大要とその適用例などを簡潔に紹介しておきたい。
2. 修正の根拠
 英文著書(2)に発表した所によると、この宇宙には、真空中でも、10-70〜10-50cm程度の寸法をもった宇宙微子(univarinos)がいたる所に瀰浸していて、それが振動すれば波動になり、それが渦をまけば粒子になると考えた。しかし、この考え方をとるならば、一つの宇宙微子との間は一体何であるか、という疑問が新たに生ずるばかりでなく、粒子という物と空間という未知な存在の二つを別々に仮定しなければならないことになり、仏教でいう色即是空、空即是色の思想とも調和できなくなる。この根本思想に関するかぎり、藤川氏の宇宙圧力理論(3)も、小田切氏の潜態論(4)もともに正しいように思われ、著者の方が誤っていたことを認めざるを得ない。また、アインシュタインによって否定された、(1905年)エーテルが再検討され(5)、最近になって中性微子の海(nutrins sea)として真剣な検討が行われていることも(6)(7)、著者をしで空"の概念に傾かしめた原動力である。すでにマイケルソン(1881)モーリー(1887)の実験によってエーテルに対する光源の相対速度に影響しないことを証明したようにみえるが、当時地球自転による周辺速度30km/sのみが注目され、銀河系全休の回転の周辺速度220km/sが無視されたための結果であることが指摘されるにいたった。あるいは、われわれの知らない他の原因によって、そのような実験結果がでたのかも知れないのである。それゆえに、“空"という概念は何もないことを意味するものではなくて、宇宙の最も基本的な存在であって、“中性微子の海"と命名してもよい。そして、すべての粒子やすべての波動は、そこに変化が起ったときにのみ現象として生じ、われわれの観測にかかってくるのである。
Fig. 1 λ- f Diagram(波長と周波数の関係図)
波長と周波数の関係図  さて、宇宙微子の概念をすてたもう一つの根拠はFig.1の構成である。つまり、宇宙微子がたとえどんなに小さいと仮定しても、そのような粒子をみとめることは、Fig.1の構成をCDZより内側の領域だけに限定することになり、その枠の外側の領域を否定することになるわけである。この図の横軸は光あるいは一般電磁波の波長λ(cm)を表わし、縦軸はそれに相当する周波数f (Hz)を表わす。点Xに相当する数字と点Aに相当する数とを乗算すると3×1010cm/s(光速)になる。Y・BやZ・Cについても同様である。従来の自然科学でわれわれの知っている世界は枠A F Xの内側にかぎられ、中性微子をのぞく普通の素粒子の寸法はA点の付近にあり、電磁波の最高周波数はX点の付近にある。
 いわゆるサイ情報系はψ-粒子の有機的集合体と考えているが、B点およびC点付近の寸法に相当するψ1-粒子群およびψ2-粒子群と2段階考えたのは、日本書紀の天地創遊説や日立道根彦氏の説(8)からヒントを得たものである。また、各領域の境界点A, B, C あるいはX, Y, Z 等は必ずしも確乎とした根拠によったものではなく、べき数が単純にになるように選んだだけである。一方、山本洋一氏が研究されたブランク定数hbarの理論によると、Z点に相当する極限は1054であり、従ってC点は3×10-44となる。いずれにしても、修正されたモデルではCDZ線の外側の領域について議論することをさけたことになる。もし、修正前のように、宇宙微子の存在を仮定したとすれば、CDZの外の領域には何もないと断定したことになり、今後動きのとれないものとなってしまう。
3. サイ情報系のモデル
 前項でのべた以外の点では従来著者が説明してきたサイ情報系仮説に全く変更がないけれども、この機会にそのモデルを簡単に整理しておくのも無意味ではない。
 従来の情報系は生物の神経系ならびに感覚機関を通して外界に連絡する物理的な記憶・通信および制御系である。それらは、つぎのような中間段階をへて素粒子と関係をもつ。
   素粒→原子→分子→有機物質→細胞→器官→生物情報系
サイ情報系は、これと全く類推的にψ1-またはψ2-粒子群の適当な集合によって合成されるものと想像する。
   ψ-粒子→原子→分子→サイ有機体→サイ細胞→サイ器官→サイ情報系
 もし、ψ1-粒子群を基礎にしたサイ情報系を考えるならば、同一機能の器官が、生物情報系の場合にくらべて寸法が20ケタ小さくなり、体積が3×20ケタ小さくなる。もし、寸法を同じとすれば3×20ケタ機能が大きくなる。またψ2-粒子群を基礎にしたサイ情報系を考えるならば、寸法で40ケタ、機能で3×40ケタの開きができよう。
 生物情報系はわれわれの五感によって容易にその存在を知り得るのに対して、サイ情報系は直接容易に知る手段がない。ただし、それと現実世界との通信路が全く閉ざされているわけではない。だからこそサイ現象がおこり、一部の人々が重大な関心を払うわけである。
 サイ情報系はまた、生物情報系の単純な相似形的縮小ではないように思われる。つまり、生物情報系にはみられない、新しい、程度の高い性能が付与されているようにみえる。その根拠を一々ここにのべると冗長になるので省略するが、要するに多くの超常現象から帰納すると、そのような結論に到達せざるを得ない。また一方において、かりに ψ1-情報系の寸法が5ケタだけ小さくなったとすれば、体積は15ケタ小さくなり、同時に機能は45ケタ高くなり得るわけである。人間の頭脳が、約1010個のニューロンをもっているのに対して、ψ1-情報系は1055個のサイ神経細胞をもっても差支えはない。しかし、サイ情報系の中の情報伝送機構は、われわれの場合と全く異なるものであろうから、上記の数値は断定的なものでない。普通の神経系の中の情報伝送速度は102m/sであるが、サイ神経系での伝送は光であろうから、その伝送速度は3×108m/sであって、両者の間に106程度の開きがある。また、情報処理方法は、大脳についてよくわかっていないとしても、現代の大形コンピューターと同じ方式ではないであろう。
 サイ情報系のつぎの特長はその伸縮性の巾であろう。それは、一つのサイ細胞と、他のサイ細胞との聞か相当離れていても、ある一定の間隔に保たれ、多数のサイ細胞が3次元空間に分布して、ある整った形体を保っていると考えられる。空間的に相当離れた二つのサイ細胞がどうして任意の間隔を保ち得るか?それに答えるには、人工衛星の位置および姿勢制御を思いだすのが早い。この場合には地上との間に電波を往復させる。サイ情報系の場合は、複数のサイ細胞相互間に光を往復させる。その光は、Fig.1のψ1-世界の光である。それゆえ、サイ情報系は必要に応じ非常に広い巾の伸縮が可能である。われわれにとって通過不能と思われるような障壁を容易に通過するのは、そのような構成だからと想像する。
 つぎは運動のエネルギー源である。われわれ人間をふくめて、自然界の生物一般は、食物を媒介にして、非常にまわりくどい経路を通して、太陽の光エネルギーで運動しているわけである。すなわち、植物の葉緑素が太陽の紫外線をうけて炭水化物をつくり、それを動物が食べて、筋肉の中のADPをATPに変化し、エネルギーをだすとADPにもどるという仕組になっている。しかし、サイ情報系の場合は、紫外線よりはるかに短い波長の光を直接吸収して、それ白身の必要に応じて運動に消費するであろう。ただ、現在の処どのような原理で光速の壁を突破するか想像が困難である。今後の考察にゆずることにしたい。
4. サイ現象の説明例
 サイ情報系の仮説を使って、各種のサイ現象を説明し、まがりなりにもある程度理解することができる。 もちろん今後の実験的研究によらなければ、細部にわたる満足な説明とまではゆかない。例えば、サイ情報系が生物情報系と具体的にどこでどのように連絡するかはわからない。夢の研究では脳幹の橋の部分が刺戟されるのではないかといわれている。また、超感覚は視床下部に作用するという説もある。第3の目として額の中央に穴をあける場合もある。
 いずれにしても、その付近の神経繊維の1本1本にサイ情報系が作用して、ニューロン・パルスを発生するものと考えられる。
(a)ESP まずテレパシーの例をとってみよう。これはAという人間が五感を通さないでBという人間の考えを知ることである。いま、サイ情報系をψで表わし、AおよびBをそれぞれの人間の情報系を表わすことにすれば、テレレパシーは、
矢印ψ矢印
のような形式で説明できる。ここでψはAまたはBから脱出したサイ情報系とみることも、どちらにも属しない媒体とみることもできる。場合によっていろいろあるのではないかと思われる。しかし、同じESPでも、予知などの場合は、どちらにも属しない高級のサイ情報系が中間にあるように思われる。一方透視などの場合は、Aから脱出したサイ情報系が主役を演ずると思われる。
(b)PK 意識が物質にエネルギー作用を及ぼし得ることは、もはや疑いをはさむ余地がないまでに研究しつくされたように感じられるが、その機構についてはいまだに謎である。 Duke大学で1951年頃からForwaldが周到で広汎な実験をやった結果によると(9)、データが放物線上に10-4の精度で分布していることから重力の場が関係しているであろうということや、無数字の木の立方体表面にAI、Cu、Ag等の薄層をかぶせると、薄層の厚さと中子数(A-Z)に応じて指数関数的にエネルギー作用が弱まることから、原子核で吸収をうけるであろうということなどを結論している。もし、重力の場が薄層を通して立方体に作用するとすれば、ほとんど減衰をうけないはずである。だから、中性子程度の寸法のサイ細胞をもったサイ情報系が無数字立方体に作用したと考えれば、ある程度理解できるのではないかと思う。
(c)念写 これもPKの―種にふくめられている。サイ情報系の一部が2次元の情報を携え、感光膜の上に展開し、被験者の意識から司令をうけて一斉に光エネルギーを開放すると解釈する。Fig.1のψ1-世界の光の波長は短かくて、われわれのの世界に干渉できないが、複雑なサイ分子の振動は容易に可視光線の範囲におよぶ。
(d)キルリアン写真 単なるコロナ放電現象とサイ情報系エネルギーとの相互作用とみることができる。とくに、photon leaf現象は、葉の一部が切取られるとき、サイ情報系部分だけ残留したと解釈する。
(e)スプーン曲げ サイ情報系の各細胞が原子の一つ一つに作用し、原子相互力に逆らって引離すような力をおよぼすならば、加熱のような不規則運動によらずして、金属を柔らかくすることができる。
5. むすび
 ほとんどのサイ現象はサイ情報系仮説によって大局的に説明できる。しかし、細部についてはまだまだ不明な点が多い。それを一つ一つ明らかにするのが日本PS学会の使命である。しかし、科学的方法にも限度があることを自覚する意味で今度の修正を試みたのである。なお、しばしば議論の対象になる科学と宗教の関係は、Fig.2のようになるのではあるまいか。会員の御批判をお願いする次第である。また、説明例として心霊治療の問題、それと倫理道徳との関連等の議論は非常に重要であるが、この小論文の範囲におさめることができなかった。今後みなさんの御鞭撻によって発展させたいと願っている。
PS学会の立場
謝 辞
 今回の部分的修正を思いたった動機は、口頭によって、近畿大学名誉教授小田切瑞穂博士および電気通信大学教授武井健三先生から与えられたヒントから出発したものであることをのべ、両先生に謝意を表する。また、P.I.S.の大局的な考え方に対しては、ニューワークエ業大学Dr. Douglas Dean教授やミュンヘンの実業家Dr. Erik P. lgenbergs 氏その他多くの方々から賛成の御手紙を頂いた。その他、講演会等の機会に御討論下さった方々に対しても、一々お名前をあげないが深甚の謝意を表するものである。
文 献
(1)拙著:情報科学と五次元世界, p.215, NHKブックス, 1971
(2)拙著:Five Dimensional World - Unified Science to understand Miracles, USL,1974(PISはp.31, univarinoはp.34)
(3)藤川頼彦:宇宙圧力理論、電気学会電磁界理論研究会、昭46・7・21 (1971)
(4)小田切瑞穂:科学解脱、p.68、桜楓杜昭42・1・25 (1967)
  注:同氏の著書はこの他に犀書房から「科学本門」、桜楓杜から「科学反省記」等多数ある他、科学読売1964年
  1〜5月に「生体内の原子核転換をめぐって」にも潜態論が引用され、英文論文もだされている。
(5)P.A.M.Dirac : ls there an Ether ?, Nature、November 24,1951,pp.906-907
(6)H.C.Dudley : ls there an Ether ?,lndustriaI Research, November 15,1974
(7)L.Stodolsky : Speculations on Detection of the "Nutrino Sea ", Physical Review Letters, January 13, 1975
(8)日立道恨彦著、大沢重治絵:太古日本天地創造説一日本神話絵図解説、道ひらき文化学部(〒185国分寺市東恋ケ窪3-9-1)、昭42・8 ・20 (1967)
(9)Haakon Forwald:An ExperimentaI Study Suggesting a Relationship between Psychokinesis and Nucleal Conditions of Matter, Journal of Parapsychology, 23,1959,pp.97-125

Received : March 1, 1976

The museum of kokoro science
PSIJ