PSI Vol.1, No1 May 1976 Special contribution paper 2. pp.14-16.
 特別寄稿論文
Kirlian 高圧放電写真
イゲンスベルグス博士(翻訳 関英男)
High Voltage Photography
Dr. E. P. Igenbergs (Transrated Hideo Seki)

1. まえがき
 著者は永年にわたり、人間エネルギー(Human Energy)という問題について研究してきたものである。わたくしは最初、人間エネルギーを活動力と非活動力を原点にして観察しようとしたが、研究が停滞して不成功に終わっている。研究の結果を拙著“超常と人間エネルギー” (Eric Igenbergs : atransyendenz und menschliche Energie, Akademischer Verlag Dr. Peter Belej, München 13,1971) にまとめてみたのだが、その中でわたくしは、直観、催眠、テレパシーおよび予知が各活動においてある役割を演ずることを証明しようと試みた。かくして、各人の全生涯はすでに誕生の時点でその辿るべき道をあらかじめきめられているとの仮説に到達した。ただ思考の自由だけが残されている。と、こういうわけだが拙著に対する反応は意外と少なかった。多くの同意と激励を頂戴しているのだが、核心にふれるような関心はなかった。わたくしは、なぜこうなったかとつくづく反省してみた。そして、数学的あるいは光学的に証明されるようなものや、再現可能な現象で裏づけられるようなもののみが真に認められる点に気づいた。もしそうならば数学的あるいは光学的に明白な現象を追求すべきである。これはキルリアン効果についての第1報をだした1972年〜73年ごろの事情であった。わたくしは必要な装置を購入し、研究室を建設した。現在に目標は人間エネルギーを定性的、定量的に追求することである。その第1段階ですでにつぎのような困難に逢着している。

2. 装置と条件
 高圧における変圧器はどのような作用をするだろうか95,000Vか10,000Vでとゞめるべきだろうか、もっと高くするのがよいだろうか?この問題は今日にいたるまで解決されていない。わたくしは目下の所、相対的な資料をあつめるために、10,000V付近で観察することに落付いている。
 つぎに、写真感光面上に指をどの位の圧力でおしつけたらよいものだろうか?もし、指の圧力が強ければ、コロナは一体強くなるものだろうか、あるいは弱くなるものだろうか?それは大した差のないことがわかったのでメーターの目盛で100g一定に圧力をおさえることにした。
 また露出時間は1秒かそれとも数秒間にすべきだろうか? この場合、露出時間を長くすると、形や色を分析することが困難になることが明らかである。われわれは、人にみせる絵として格好よい撮影を沢山やったが、それらは分析に適しなかった。こんな理由から、現在われわれはだんだん短い露出に移行している。さらに、陰極についての困難がおこってきた。最初、研究室では金の薄膜をつけたガラスを用い、ついで、銅、銀および金のような金属陰極を用いた。ついに、われわれは銅の陰極を用いることにし、これで約6000枚のスライドをとった。その後、われわれは液体陰極の着想にたどりついた。現在はこの条件でいろいろな効果を発見しようとして努力している。つまり、数学的に計算された容量での電磁界を得ようとしている現状である。
 われわれは液体陰極によって、さらに500枚のスライドをとった。しかし、スライドの再現性はまだ不十分であった。どうして、このような問題が起るだろうか?正確に同じ写真を得るには、何回シャッターをきるべきだろうか?フィルムを手操作で陰極の方に動かすことも、2〜3分以内より速く指の位置をかえることも不可能であった。そこで、われわれは1分間に5回以上級影しない自動装置をつくってみたわけだが、しかし、やはり完全な再現性は得られなかった。そこで、指をフィルムの上に接触しないようにし、液体を通してコロナ自身がみえるようにすることを考えた。

3. 映画撮影
 2枚のガラスの間に食塩水をいれると、カメラでよい写真がとれるようになった。シャッター頻度をもっと多くするのに普通のカメラでは間にあわないので、8mmフィルム・カメラを用いることにした。このため、われわれは増感の必要が起った。増感をコロナ光で3500倍にできるDel-Noctaという方式を得たので、映画撮影ができるようになった。わが研究室ではすでに数本の映画フィルムを撮影した。最初、毎秒18コマのカメラを用いたが、それでも完全は変化を分解撮影することができなかった。つまり、まだ多重撮影効果があった。そこで、その後、毎秒54コマ撮影つまり、毎分3000コマ撮影のカメラを用いることにした。しかし、それでも一部多重撮影効果がみとめられた。また、この位のスピードになると、それに相当した感光速度低下がおこる。現在、われわれは、毎分3000コマでも十分よく撮る高感度陰極を作製した。

4. 結果の検討
 以上の短かい説明から明らかなように、われわれは今だに技術的問題で苦闘している。同様なことは説明づけの問題についてもいえる。疑いもなく、人間の手の指の高圧撮影は人間エネルギーについての重要な情報源である。陰極の上の電磁界が強く変形するのは、人間プラズマ放射の性質や量の変化によるわけである。今では、人々を良導体と不良導体によって分類できることが明らかになっている。2種類の人々の減極性はよくみわけられるけれども、減極の正確な条件についてはまだよく分っていない。二人の異った人が一つの陰極に同時にふれた場合に、交流の通電によってーまたは十の電荷を受取り、それらがコロナの後で放電するはずである。これは必ずしもつねに起るわけではなくて、放電せずに、よく引用される“プラズマ・ブリッジ”を形成することがある。これは果して“友情のブリッジ”であろうか?このブリッジは折合いのよい仲間同志の場合にのみ現われ、お互いの意志表示であろうか?この問題に対する明確な解答はまだ与えられていないし、研究はまだつゞいている。今後の技術的改良によって、もっと明瞭な撮影ができ、多重撮影効果もないもっと正確な分析ができよう。

5. 関連問題
 同時にわたくしは他の研究結果についても検討している。とくに興味のあるのは、脳の左右両半球の物質に関する研究発表である。そこで、左手と右手でコロナがどのように異るかをみなければならない。しかし、最も重要なことは、もちろん、南半球に決定的な影響を及ぼす所の意識の影響が撮影された写真に現われるかどうかということである。
 現在までの経験によれば、人間エネルギーはプラズマに関係がある。それにもかゝわらず、そのエネルギーは食物だけから供給されるわけではなくて、主として呼吸を通して発生し、何か別のものと考えなければならない。すなわち、この人間エネルギーは重力、電気および原子力といった今まで既知のエネルギーに対応するものでない性質をもっている。これは疑いのないことであるが、しかし、他種のエネルギーを検討したときと同様に、定性的・定量的検討を加える必要にせまられている。
 今日、高圧写真法は材料試験や、医学上の診断の分野で多くの議論がある。わたくしはこれを未開発の分野とみとめ、こゝ当分、可能性の領域に属するような結果について明確な一線を画しておきたいと思う。サイコトロニクス会議で議論された新方法は今後の研究に役立つであろう。

6. あとがき
 Monte Carlo会議における最も重要な結果の一つは人間エネルギーに関する研究の統一に向っての努力であった。ソ連の代表の貢献から明らかなように、わたくしはこれを創造性の面が装置と数学の活用によって探究されている非常に積極的な徴候とみている。テレパシー単独の現象の記録は減少したが、それは失望するに当らない。将来必要なことは、概念を明確に定義するような統一用語である。
 コロナを励発するには高圧印加のみならず、低圧印加も必要である。わたくしがスライドをつくるとき、旧式になったと思うのは、むしろ高圧印加の場合である。低圧印加でとったスライドは今でも利用している。非常に興味のあるのは、映画撮影機で毎分3000コマ、すなわち各コロナが0.02秒露出の“生命撮影”フィルムをとったものである。われわれはやがて、Monte Carloで討論したような生体原子および生体磁気符号を解明する希望もでてくると信ずる。
  (以上関訳)
訳者注:この論文はPSIJ月報2号に報告したように1976年1月8日東京ヒルトンホテル526号室で、Dr. Igenbergs が多数のスライドと8mm映画を日本PS学会役員に示された際に提供されたものである。英文のSynopsisは、スライドとフィルムの具体的説明であり、和訳した部分は同氏のこの研究をはじめた動機や、研究の進め方についてのべてある。同氏は本会誌に発表されることを快諾されるとともに今後も随時ヨーロッパのサイ科学情報を下さることになっている。

The museum of kokoro science
PSIJ