PSI Vol.18, No1 July 1996 Lecture 3. pp.7-8.
日本サイ科学会創立20周年記念講演会
講演3 午後1時30分〜午後3時30分

「あの世の科学」概要 ー宇宙のしくみを解明するー
天外 伺郎 科学評論家
 ただ今、司会の方から工学博士の称号があると御紹介がございましたが、ペンネームの天外伺郎は博士号の肩書きをもっておりませんので(笑い)あらかじめお断りしておきます。
 私はニューサイエンスの立場で「この世とあの世の科学」を考えてみたいと考えています。このニューサイエンスを提唱したのは有名な物理学者のデビット・ボーム(1907-1992)であります。かれによりますと、この宇宙は二重構造になっておりまして、われわれのよく知っている物質的な宇宙の背後に、もう一つの目に見えない宇宙が存在するということです。
 ……こうして天外先生は沢山のスライドによる図形で説明を始められました……
 ボームはもう一つの目に見えない宇宙のことを暗在系(implicate order)と呼びました。目に見えない秩序という意味です。これに対して、目に見える物質的な宇宙を明在系(explicate order)と呼んでいます。仏教の宇宙観と照らし合わせてみますと、明在系が「色」に、暗在系が「空」に対応しています。明在系や暗在系などといっているとややこしいので、私は俗っぽく「この世」とか「あの世」と呼ぶことにしています。
 しかし、「この世」とか「あの世」とかいいましても表裏一体をなしているわけですから、われわれは「この世」に生きていながらにして実は、この瞬間も「あの世」で活動しておりまして、ただ意識しないだけです。これは、科学の立場でも、仏教やヒンズー教の宗教的立場でも同様のことを言っています。「あの世」は別に死んでから行くところではありません。皆さんはすでに「あの世」にいるのですが、気がつかない、つまり無意識の世界だから気がつきようがないのです。ところが、自分の生きていることの大部分は、向こう側つまり「暗在系」で営まれているのですから。テレパシーとか透視とか、いろいろな超常現象が起きるわけです。
 ボームによりますと、暗在系では明在系のすべての物質、精神、時間、空間などが全体として畳みこまれており分離不可能であると言っています。これをボームはホログラフィーの原理を使って説明しています。しかし、天外先生は電気通信の専門家ですから、フーリエ変換により時間波形対周波数スペクトルの関係で説明されています。
 ただし、話が長くなるのでこれ以上のことは省略します。
 つぎに、理論物理学の限界についてお話ししましょう。まず、相対論で電磁力や重力を扱う領域は1028cmより10-9cmの範囲に限られるのに対して、量子力学で扱う領域は10-9cmより10-33cmまで扱うことができます。しかし、10-33cmのプランク・スケールより小さい寸法では、時間も空間も定義できなくなるので、そこでは性質が変わってしまうので微分も積分もできない世界になってしまいます。私は、ここを「この世」と「あの世」の境目と考えました。
 物質がエネルギーだとは、E=MC2を根拠にしてアインシュタインが言ったことですが、物質も精神もエネルギーとして暗在系に畳みこまれている、とはボームが言ったことであります。ですから、この理論を誰かがひもといて精神爆弾などというものを作らなければいいのですが……「ウン」と思ったら、どこかで爆発が起きるようなことになったら大変です(笑い)。
 ……当日会場には易断所を開設しておいでの専門家も聴講しおられましたので、スクリーンに易の六十四卦の図を示された時は大変喜んでおいででした……
 驚いたことには、遺伝符号の言語体系と、易経の言語体系と、現代のコンピューターの計算言語体系の三者は全く同じであります。もっとも、遺伝符号DNAはA、T、G& Cの4者択一でありますし、易経の言語体系は2者択一となっています。易経に最初注目したのはライプニッツという数学者でありまして、そのライプニッツが六十四卦の方位図の中に自分が書き込んだ数字が1から64までであります。これは非常に不思議な話です。易経が最初に開発されたのは約3000年前であり、遺伝符号のDNAが解明されたのは1961年であります。易経が出た時代にDNAの構造がわかっていたはずがないのに、人間の運命を占っていたのは偶然でなくて、何かの接がりがあったのではないか、と思われます。
 ライプニッツはこの易経の六十四卦を見ていて、ハタと閃いて2進法という数学を発明したのでありまして、これはニュートンでさえ出来なかったことです。この2進法の数学を基礎にして、300年後にコンピューターが発明されたわけです。これを見ていると、コンピューターの内部言語と「あの世」の言葉とは、遠い親戚関係である可能性さえ想像できるのであります。
 「あの世」には、すべての情報があるはずです。「アカシック・レコード」という言葉があります。これはヨーロッパの精神主義者の間で使われた言葉です。アカシック・レコードとは、この宇宙空間の中にすべての記録・過去・現在・未来のことが存在するということです。しかし、普通の人は見に行けない。ある程度、精神レベルの高い人は、ほんのちょっと覗き見るくらいのことはあり得るのですが。
 ところが、全体を知るということは極めて難しい。その全体を知るというのが「悟り」です。ですから人類がみんな「悟り」を開いてしまいますと、知識の伝達の必要がなくなるはずです。本など必要なくなる。学校も必要なくなる。みんな見に行けますからね。
 さて、科学の究極はどうでしょう。
 ニュートン→アインシュタイン→量子力学→超ひも理論→ニューサイエンス→暗在系…→
「あの世の科学」
 つぎに、深層心理学はどうでしょう。
 フロイト→ユング→集合的無意識→「あの世の科学」…→
 今度は東洋哲学はどうでしょう。
 ヴェーダ哲学→易経→ヒンズー教→仏教→儒教→道経→「あの世の科学」…→
 こんな話が延々2時間に及び、多くの聴講者の興味を惹いたようでありました。とても書き切れませんので、詳細は下記の御高著に譲ります。
 天外伺郎著、未来を開く「あの世の科学」:詳伝社
 「超能力「と「気」の謎に挑む:講談社

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