PSI Vol.8, No2 April 1985 Collection of autographs1. pp.14-16.
安久津流"超宇宙物理"発想の基盤
伊沢久夫*
Hisao lzawa*

 北海道で安久津ファミリーと言えば、発明一家としてつとに有名である。特に、三男義人氏(日農機社長)は、50件以上の特許をものされ、昨年、名誉ある通産大臣賞を授与されたばかりである。その発明一家の中でも畏友政人氏の天才ぶりは際立っており、非科学的とも言える奇想天外な仮説を考え出し、しかも、はた目から見れば全く無茶な飛躍につぐ飛躍の実験を重ねながら、いつのまにかその仮説を見事に立証し、実用化してしまうという離れ技を演じる。 まさにミステリアスとしか言いようがない。
 彼の飛躍ぶりは発想・実験のみにとどまらず、日常の会話や文章にまでいかんなく発揮され、知らぬ者は多かれ少なかれ一様にとまどいを感じる。私もその一人であった。初対面でのいつわらざる印象は、これがかの高名な超能力医かと不審に思ったほど、科学者として少なからぬ拒否反応が生じるのを抑え難かった。ところが、病弱な身内の者がみるみる快復する事実を見せつけられ、また何度か会って話を聞いているうちに、いつしか初めの印象は薄れ、次第に驚きへ転じていった。
 その安久津氏がこのたび権威あるサイ科学会誌に、彼一流の論法でお得意の宇宙論を投稿したという。門外漢の私に彼の宇宙論がどこまで理解できたかおぼつかないが、少なくとも、アインシユタインの特殊相対性理論をごく気楽に否定していることは催かである。恐らく、現在の天文・宇宙学者には受容してもらえまい。しかし、もしかしたら、100年後には安久津宇宙論が常識となるのかもしれない。彼の“離れ技”をつぶさに見せられ続けた私には、それが単なる迷論とは決して思えないのである。そこで友人として、安久津政人氏の“実績”の保証人とこり、ささやかながら本論文を側面から支援する次第である。
*北海道大学獣医学部教授
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